濱沖敢太郎のブログ

濱沖敢太郎(教育学)のブログです。主に研究教育のメモとして使おうと思っています。

日記221110

合間合間と思ってたけど、とても勉強になるしおもしろかったので、あっという間に読んだ。

 

まず、「はじめに」で「本書で取り上げる大きなテーマは,「大学受験における共通テストを年複数回行う制度を実現することは可能か,またその社会的意義は何か」です」とあってその時点でインパクト大。大学入試制度をめぐる議論に関して自分が無知ということなんだろうけど、そんな展開考えたこともなかった。

それで全体を読んでみて冒頭の問いに自分は「やめとこか...」としか思わないんだけど、この本がいいなと思うのは、テストに関する技術的可能性と課題をていねいに挙げてくれているところ。ちゃんと考えようと思ったらこれだけの論点があ・り・ま・す・よ・ね!みたいな迫力がすごい。

標準化なりIRTなりについては、最低限の用語はなんとなく知ってたけど、それらが具体的なテスト設計にあたってどんな論点を生んでいくのかみたいな話がたくさんあって、テストと入試全般の理解が進んだ。本全体としても第Ⅱ部がテスト理論、第Ⅲ部が入試への応用という構成になってるので、読み直すとき行き来しやすいと思う。

以下の記述が印象に残ったので引用しとく。

表4-1(濱沖注:標準化テストの入試や教育への活用の可能性をまとめた表)はある種の理想を述べたものですが,それが実現可能であるかどうかについて,テストや調査の目的に照らしてきちんとした判断がなされることは,制度設計上,絶対に避けて通れないのです。そしてその過程で,実はこれらの理想がかなえられないことが,明らかになるのかもしれないのです。