濱沖敢太郎のブログ

濱沖敢太郎(教育学)のブログです。主に研究教育のメモとして使おうと思っています。

【2020年度シラバス1】教育制度論

0. シラバス

(省略:大学システムに掲載済)

 

1.  授業のねらい

・この授業には2つの「ねらい」があります。
 a)教育制度にかんする知識を増やすこと
 b)卒論を念頭においたレポート作成のスキルを身につけること
・このうち、前者については実際にレポートを作成する中で勉強してもらいます。
・本資料では、特に後者に限ってその趣旨と実際の作業プロセスを説明します。

 

2. 「卒論を念頭においたレポート」について

・みなさんは、これまでに作文(小論文を含む)の経験が数多くあると思います。しかし、この授業ではその経験を一旦すべて忘れましょう。
卒業論文をはじめ、論文はたくさんある文章の中でも、特殊なタイプ=型の文章です。その型とは、端的に言えば「問い」「論証」「結論」のセットのことです。難しいことを書いてある文章=論文、ではありません。⇒詳細は第二回オリエンテーションにて。
※大学においても、このような「論文の型」を念頭におかないレポートを出題する講義もあるので、違いに注意しましょう。
※当然ですが、「論文の型」の詳細なつくりは研究分野によって違います。

 

3. 具体的に、何をやるのか

・濱沖が指示する「命題の真偽を検証」してください。
 問い:命題Aは真か偽か
 結論:真、または、偽
 論証:結論を導くために必要な論理的説明+それを支える根拠(データや資料)
・授業時間外:
 a)上記課題に即してレポートの原案を各自作成→授業時間中に受けた指摘を踏まえて加筆修正
 b)グループメンバー(原則6人1組)のレポートを事前に読み、主に「論証」として不十分な点を探しておく
・授業時間:グループメンバーのレポートについて、加筆修正に向けた質疑応答を行う。

 

4. レポート作成上の注意点

(1)引用ルールについて
・この授業では引用について厳格に評価します。
・回り道になりますが、まずはこの趣旨について説明しましょう。「2. 」で「論文は特殊なタイプの文章だ」ということを書きました。なかでも、卒論を含む学術論文にはさらなる条件が設けられます。それは「知見の新規性」です。このため、「他人がすでに書いていること」と「自分のオリジナルな主張」を明確に区別する必要があります。そして、前者であることを明示するのに使う表現の形式が「引用」です。言い換えると、この原則は単に「人のマネをしてはいけない」ということではなく、人のマネをした部分を明確にすることで「自分の仕事の目新しさ」を際立たせるための表現方法なのです。この原則に違反することは、学術に対する当人の信用を失墜させます。実際に、博士論文においていわゆるコピペが発覚したことで学位が剥奪されたケースもあります。私個人は、みなさんの大学での勉強=学位取得も同様の重みを持つものと考えます。この授業で引用の適否を厳格に評価するのは、以上のような学術の基本的な原則を尊重・習得してもらうためです。

・その上で、以下の引用ルールを守ってください。
・特定の文や段落に根拠となる出典がある場合には、「脚注」に以下の情報を明記してください。
 (省略)
・「脚注」の作成はWordの機能を活用してください。
ツールバーの「参考情報(参照設定)」→「脚注の挿入」

(2)情報の出典について
・論証に必要な根拠を集めるにあたっては、以下の学会誌に掲載されている論文を読むことを推奨します。これらの雑誌論文(の一部)は、J-StageにPDFファイルがアップロードされており、誰でも読むことができます。
 ・日本教育行政学会『日本教育行政学会年報』
 ・日本教育政策学会『日本教育政策学会年報』
 ・日本教育学会『教育学研究』
 ・日本教育社会学会『教育社会学研究』
 ・日本教育経営学会『日本教育経営学会紀要』
 ・日本教育制度学会『教育制度学研究』
 ・教育史学会『日本の教育史学』
・引用の仕方についても、これらの学術誌を参考にしてみましょう。
・上記に示した以外の出典については、以下のサイトから探すことが可能です。
 ・Cinii Articles(日本の論文を検索)
 ・Cinii Books(全国の研究機関が所蔵する書籍の検索)
 ・NDL-Search(国公立図書館が所蔵する資料の検索)
 ・ブックマCatalog鹿児島大学が所蔵する資料の検索)
 ・Google(言わずもがなggrks)
・CiniiやGoogleは広汎な資料を提示してくれるのでとても便利な反面、情報の質がピンキリです。特に「よい論文」と「悪い論文」の区別ができない状態で、これらの検索サイトに頼ることはかなり危険です。このため、ある程度のクオリティが担保されている学会誌(前掲)を推奨します。
・同様の理由で、いきなりNDL-Searchなどで手広く調べるよりも、ブックマCatalogで引っかかった本などを附属図書館で調べてみる方が、効率がよいと思います。

(3)その他
・みなさんにある程度なじみのある作業で、この授業の「論証」に近いのは数学の証明です。
・ただし、高校までの数学の証明と違い、この授業で扱う命題は必ずしも真偽を明瞭に主張できるものではありません。たとえば命題1の「給与水準が高い」というのはどういうことでしょうか。平均値?俸給表の違い?そもそも基本給だけor諸々の手当を含む?
・ここで重要なのはどのような条件(用語の定義や使えるデータ)のもとであれば真or偽と主張できるのかを明示するということです。

 

5. レポートの書式(表紙不要)

(省略)

 

6. レポートの提出

(省略)

 

7. レポートの推敲

・授業当日はmanabaで共有されたレポートを全員が事前に読んできて、【論証が不十分な点】を批判してください。
批判なくしてよいレポートはないので、コメントに遠慮は無用(むしろ有害)です。草稿の段階で完璧に書ける人はほぼいません。自分の文章を大幅に書き直す、という経験を通じて「論文の型」を身につけるのだと思ってください。
・議論の口火を切ってもらうための工夫として、各発表に対してコメンテーターを指定しておくことを提案します。
・修正稿・提出稿の作成にあたっては、最低限、メンバーからのコメントに答えられるものにしましょう。

 

8. 各回の作業割りあて

第1回 オリエンテーション(1)概要説明、グループワークに向けた準備
第2回 オリエンテーション(2)論文の型にかんする学習(教科書講読)
第3回 オリエンテーション(3)レポート作成と推敲の練習
第4・5回 レポート1草稿チェック(25分×3人)
第6・7回 レポート1修正稿チェック(25分×3人)
第8回 レポート1提出稿チェック(15分×6人)
第9回 中間報告会(受講者のうち数名分のレポート1をチェック)
第10・11回 レポート2草稿チェック(25分×3人)
第12・13回 レポート2修正稿チェック(25分×3人)
第14回 レポート2提出稿チェック(15分×6人)
第15回 最終報告会・全体のまとめ

 

9. 命題一覧

(省略)

 

10. 成績評価の基準

・3回のレポートをそれぞれ、3段階で評価します。
  A:十分に論証できている(20/40点)
  B:おおよそ論証できている(15/35点)
  C:まったく論証できていない(10/30点)
・引用の形式が整っていない箇所1つにつき3点減点。
・第3回以降の授業欠席1回につき3点減点(これとは別に6回休んだら不合格)。
・中間報告会および最終報告会でレポートを取り上げさせてもらった方には5点加点。

 

11. 次回、次次回にむけて

・次回:教科書『論文の教室』を読んで、あらためて「論文の型」を勉強します。教科書を必ず持参してください。
・次々回:レポートの推敲にかんする練習を行います。「レポート作成上の注意点」を踏まえ【命題1】にかんするレポートを作成してきてください。