濱沖敢太郎のブログ

濱沖敢太郎(教育学)のブログです。主に研究教育のメモとして使おうと思っています。

日記220101

いい意味で、むーんという読後感。

 

まずは、読みやすい。計量のモデルとか分からない箇所もたくさんあるんだけど、課題やその趣旨、モデル選択の理由とかが明瞭に書かれてるので、プラスアルファでどこ勉強しようorすべきかなみたいな、続きの読書の方針が立てやすい。

 

さて内容だけど、一番おもしろかったのは補論1だった。何となくの印象なのでうまく言葉にできないか、ここでちょっと模索。

 

こういう言い方が適切か心許ないですが、本論の各章は政策の検証として「変化球」で、補論1が「直球」に見えたんです。補論1は「品川の学校選択は教員の意識改革が目的だったから、教育改革の手法として学校選択についてどう思ってるのか教員に聞いてみよう、ドン!」てな感じ。それに対して、本論の各章は「学校選択の導入をめぐってどんな問題が考えられるかな」と間口を広げる感じというか。後半特に5章は教員に焦点が当たっているんだけど、教員の自分の仕事に関する一時点の評価なので、複数時点に関わる改革評価の問題としてはスッとは頭に入ってこないというか。

 

ただ、上のような話でこの本微妙だなと思ったかというと全然そんなことはなくて、それが冒頭書いたいい意味での、むーん。それというのも、本書の端々から「本当はこんなデータがほしいんだけど今できるのはこれで…」というニュアンスが感じられて、実際データの制約についても丁寧に書かれています。それでだいぶ話が飛びますが、調査とても大変だったのではないかと思うわけです。たとえば上に書いたようなド直球な課題設定は、調査のハードルをかなり高くするはずで、その中でかなりシンプルではあっても当該項目を入れ込んだこと、そしてそれを補論に組み込んだところに(僕の妄想かもしれないけど)著者や研究グループの心意気を感じたわけです。あるいは、品川区関係者がどう評価するのか、とか。そんなこんなハードルと心意気いろいろ考えての「むーん」。

 

ちなみに、品川の小学校での選択制は2020年、ブロック制から隣接区域制に変わったらしい。中学は自由でおよそ変更なしとのことだけど、義務教育学校の設置や従来からの小中一貫教育との関係を考えて、とのこと。審議会答申も見てなるほどなとこれまた勉強になった。

 

とりあえず、言葉にできた気はする。補論が1番おもしろいというまとめがいいかは分からないけど、4段落目に書いたように、本論はいろいろ間口を広げてくれるので、教育行政に関心のない人、ここでは本論のテーマに関わって教育社会学関係者をメインに想定してるけど、自分たちの行動がどういう結果をもたらしてるのかを知ってほしいという意味では、広く保護者が読者層として想定されてる、されうるんじゃないかと思う、真面目な話。

 

(久しぶりに長め…)