濱沖敢太郎のブログ

濱沖敢太郎(教育学)のブログです。主に研究教育のメモとして使おうと思っています。

日記220225

読んだ。全体に対して感じた印象はおよそ2つ。

1つは「職能形成」がよくわからないということ。これは学校の先生の成長のあり方をあまり具体的にイメージできないという読者としての僕の問題で、本書でもたとえば「授業がきちんとできている」などの項目がきちんと設けられている。後に書く内容とも関わるんだけど、この本を学校の先生と一緒に読む機会があったらとても勉強になりそう。

もう1つは調査やデータに関して、ないものねだりをしたくなったということ。内容に即した部分から言えば、パネルデータであることの意義は総じて第1部の方がより明瞭だと感じた。理由はたぶん2つあって、1つは時点間での変化がより重要な問題だと考えられる変数が扱われる傾向にあるかどうか。もうひとつの理由は、第2部は中堅教員が対象なので本書で扱ったのより長い調査スパンのデータをとった上であらためて成果が出るんじゃないかと邪推?したこと。研究グループの活動自体は継続されているみたいなので、今後続編が出るのが楽しみ。この点、目次だけ見たときに若干浮いてた1章(アメリカを中心とした研究課題の整理)が今後の作業含めて見通しを与えてくれて勉強になった。

内容から少し離れた部分で言うと、「ここまでガッチリ教育委員会等が調査に協力してくれるなら...」というのがいろんなことの前提になるんだけど、ただただ無い物ねだりをしたくなってしまった(こんな変数あんな変数)。それと関わって、あらためてパネル調査の意義ってなんなんだろな、と考えさせられた。僕がパネルデータの意義を感じた第1部だとストレス尺度?のデータ集めが大事になってて、それは確かにパネルデータが生きる部分だろう。ところで、編著者だけで調査設計や実務すべてを取り仕切ってるとすると、相当調査コストが大きかったんじゃないかと思う。いや、絶対大変。それで、僕がないものねだりをしたくなるような変数や課題って、よく考えるとパネルデータじゃなくてもいいというか、もちろん回顧データでもいいしあるいは行政が持っている職歴等に関するデータとの結合も考えられるかもしれない、限られた調査コストをどう割り振るか考えたときにパネルデータの取得が最優先になる条件ってどんな感じかな...などなど。ここまで全部自問自答かつ「教育委員会等の絶大なる支援」が前提になってて、本書の意義や課題とか関係ないのがごめんなさいというレベル。

ついでにまた関係ない話を書くと、以前教員免許状更新講習で川口俊明さんの学力調査に関するいろんな論考を紹介したら「ぜひ管理職、教育委員会事務局の人に伝えてほしい」との感想をもらったことを思い出しました。そういう?意味でも、学校の先生と一緒に読んでみたいなと思った。

悲しむべきは、この本すごくおもしろいなとかこの研究すごく大事だなと思って通読したのに、同様の研究を展開する能力が自分にはないこと。繰り返しになるけど、せめて、この本の内容を身の回りの誰かと共有する場くらい、ほしい。

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