濱沖敢太郎のブログ

濱沖敢太郎(教育学)のブログです。主に研究教育のメモとして使おうと思っています。

日記220303

佐川さんの博論本。初出論文のいくつかは雑誌論文あるいは学会発表で拝見していました。自分の論文もいくつか引用してくださっていて、関心を持っている対象があまりに重なっているので、どうやっても感想を書くのが難しいんだけど、ちょっとまとめてみる。

自分語りから始めるのもアレなんですが、『境界線の学校史』に入れてもらった論文を同じパートになった呉さんや江口さんの論文とあらためて読み比べたときに、ものすごいあっさりした文章というか、定通教育に関わる人々がどんなおもしろいことをやったとかどんなことに苦しんでいたとか、ある意味ドラマティックな部分が欠けているということをしみじみと感じました。いくつかの書評や個別に見聞きした感想からも、端的に言えば「(勉強にはなるかもしれんけど)おもしろくはない」という読まれ方をしてるんだろうなと感じています。

これは「定時制の何がおもしろいの?」という問いに答えられない僕自身の問題なわけですが、佐川さんが自分の論文を参照して「定時制高校を『教育困難校』の事例として取り上げ(中略&補足:ることで)定時制高校特殊の現実や日常性が捨象されてしまう」と批判してくれているのは仰る通りですごめんなさいという状態。ちょっと補足すると、ここで参照してくださってるのは僕が卒論から修論までやっていたフィールドワークが元ネタの論文です。でも博士に進んで、自分がどんなに頑張ってもフィールドワーク含めて学校現場を研究の中心に据えるような形で「定時制の何がおもしろいの」問題に答えられる気がしなくてちょっとずつ路線変更してたどり着いた一つの形が『境界線の学校史』の論文でした。佐川本でも取り上げられていた脇浜先生の本とか、それ以外だと佐々木賢さんの本とか読んで格闘してみるものの「自分に書けることは何か違う気がする...」とズルズル迷ってた感じ。

そういうこともあって、佐川本への第一の感想は「定時制の先生や生徒がどんなおもしろいことや大事なことやってきたのか知りたい人はこの本読んでください」という気持ちでした。『わが青春の記録』とか実践に関わる記録を丁寧にレビューされているのは、間違いなく佐川さんならではのお仕事だと思います。

同時に、僕の自問自答に巻き込む形になるけど「定時制の何がおもしろいの」問題を佐川さんがどう考えるのかについて、もう少し聞きたいという気持ちも湧き上がりました。本書のメインパートである3〜5章に関して、この部分が「定時制高校特殊の現実や日常性」をどう論じたことになるのか。あるいは、定時制に関心を持たない研究群に対する意義も当然書かれていて、そこを煮詰めていくと「定時制に固有の〜」みたいなのとは違う、おもしろさの炙り出しができそうだみたいな見通しがあるのか、とか。

僕はなんだかんだ定時制通信制に関わる問題って大事だし面白いなと思ってるので、佐川さんに続けるように頑張ります(先に博論出されちゃったので、またハードルあがった...)。

www.hanmoto.com