濱沖敢太郎のブログ

濱沖敢太郎(教育学)のブログです。主に研究教育のメモとして使おうと思っています。

卒論のつくり方@濱沖ゼミ ver.191001

こちらは濱沖が学生の指導用に作成した資料を転載したものです。

自分のやり方でいいのか少なからず不安があって作った&人様に見てもらおうと一時的に公開しているものなので、アドバイス等いただけるととてもうれしいです。

 

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0. この資料について

・卒論をつくるにあたっての注意事項をまとめたものです

・1節と7節は必読

・それ以外はTipsとして活用してください=1節と7節の基準さえクリアしてくれれば、それ以外の内容に従わなくても構いません

 

1. 卒論の評価基準

最重要事項:新たな知識を生み出すこと!

・そのために3つの基準をクリアする必要がある

 

a. 適切な「問い」が立てられているか

問いのポイント

(1)先行研究(以下、【先】)が取り組むべきだったはず

(2)しかし、【先】が取り組んでいない 

⇒(1)はたとえば以下のようなケースが考えられる

・【先】が十分に論証できていない主張がある

・【先】の「結論」が反証される可能性があるのにそれを考慮していない

⇒「なぜ【先】にとって卒論の「問い」が重要なのか」を説明しなければいけない

⇒「自分が知りたいかどうか」ということは書くモチベーション以上の意義なし

 

b. 適切な「方法」を採用しているか

⇒より適切な「方法」で問いに取り組めたことが論文の価値になる

⇒より不適切な「方法」を用いると、反証される可能性が高くなる=論文の価値を落とす

→【先】の「問い」に対して、【先】が採用したものより適切な「方法」で取り組めるのであれば「問い」は同じでも構わない

 

c. 適切に「結論」が導かれているか

⇒たとえ自分としては望まない結果でも、上記の「問い」「方法」から一番説得的に導き出せる「結論」を示す必要がある

 

2. 先行研究を読む

・卒論の「問い」は先行研究ありきなので、先行研究を読まないと卒論は無理

・テーマにかんして新しく、かつ良質だと濱沖が考える研究はひとまず紹介する

・しかし、もっと多くの本や論文を読むことが断然望ましい

・本や論文を探すときは学会誌の目次を使うと便利

→Ciniiだと研究上価値の低い文章も検索結果に出てきてしまう

 

(書く段階になってからのプラスα)

・先行研究を読む第一の目的は「問い」を立てるため

・実際に書き始める時には、モデルになる論文を探すのもオススメ

・テーマは関係なくても、カタチを真似できる論文を探してみる

・真似できる「カタチ」は論文全体の構成から、細かな図表の書き方まで様々

 

 3. 全体の計画を立てる

・特に、調査にはそれなりの時間がかかることに注意

・調査内容の決定、協力者の募集、実査、それぞれ1ヶ月はかかると思った方がよい

・参考スケジュールは以下の通り(☆は全体で実施するゼミの目安)

       7〜11月     リサーチクエスションの設定

       12〜1月     調査設計

                       ☆RQと研究方法の検討会

       2〜3月      調査依頼

       4〜5月      実査

       6月           データ整理

       7月末        アウトライン(1)

                       ☆OLの検討会

       9〜10月     追加調査

                       アウトライン(2)

                       ☆OL・中間発表会資料の検討会

       11月         草稿

                       ☆草稿の検討会

       12月         完成稿

 

 4. 調査の考え方

・前提として、「問い」の研究対象が誰かということを丁寧に考えることが大切

・研究対象からランダムサンプリングした一定規模の調査協力者が必要な場合が多い

「方法」の適切さ実際にかけられるコスト(時間やカネ)とのバランスを踏まえて、「問い」を修正していくことも考える

・データアーカイブや既存資料の利用を積極的に検討する=調査が必要ないに越したことはない

 

5. 調査に関する注意点

・調査をする場合は必ず事前に濱沖に相談すること

・方法を問わず謝礼無しの調査は、原則認めない

・謝礼や資料収集にかんする費用は、可能な範囲で濱沖がフォローする

・収集したデータは可能な範囲でアーカイブ化したいので濱沖と相談する

 

6. アウトラインを書く

アウトラインを書く目的 自分が視認できる分量で、論文全体の構成を確認すること

・アウトラインで段落構成を作ってから、段落ごとに加筆する

・1段落につき1、2文程度の箇条書きが望ましい

 

(配布資料ではアウトラインと本文の例を提示しているが省略)

 

7. 本文を書く

・引用・参照については出典を必ず示すこと

・引用・参照の箇所とそうでない箇所の区別が明確になるように記述する

・引用の仕方は、特定の学術誌のルールに従うと間違いがない

・注は「脚注」を使うとよい

・引用・参照文献一覧は本文の最後にまとめて示す

 

(配布資料では『教育社会学研究』投稿規定抜粋を提示しているが省略)

 

8. データの保管

Dropboxなどクラウドサービスのアカウントを取得して、アウトラインや本文はクラウドで保管する

・PC本体やUSBメモリでの保管は厳禁

クラウドで保存が難しいデータ(インタビューの音声など)は、データ取得後すぐにコピーを用意する

・コピー用のCD-ROMなどは濱沖が用意できるので応相談

 

9. 教員の使い方

・困ったらすぐ相談

・困っていることから目を背けたくなったり、こんなことで相談していいのかという気持ちになったりすると思うので、「次の作業(のやり方)が自分で思い浮かばない」を目安にするといいかも

濱沖では埒が明かないと思ったらすぐに他の先生や同級生に相談する

→特にうちのゼミは個別指導が中心なので、濱沖と2人で行き詰まる前に他の道を探る

 

10. その他

卒論をつくる上で最終的な判断は各人に任せる=濱沖の指導は無視してもよい

・この資料はあくまで簡単な手引きとして作成したもの

→卒論の書き方については詳細な解説もたくさん刊行されているので、ぜひ一読を

オススメ:

白井利明・高橋一郎『よくわかる卒論の書き方』ミネルヴァ書房 2013年(濱沖貸出可)

田中拓道氏(一橋大学大学院教授)のWebサイト:

URL: http://www.soc.hit-u.ac.jp/~takujit/tebiki/tebiki2.html